キャプティブ保険の歴史は、イノベーションの歴史。その1 1960年代まで

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。

 

今日は、欧米企業のキャプティブ活用の歴史を、振り返ってみたいと思います。長くなるので4回に分けてお話ししようと思います。

 

自家保険の歴史は意外と古く、保険そのものの歴史とほぼ同列です。最も古いリスク移転の手段としての保険の記録は、紀元前2000年代頃のバビロニアまでさかのぼります。キャラバンが、資金を借りて出発して盗賊などの被害にあった場合、債権者が損害を負うという言う取り決めがあったそうで、これが保険の考え方の起源だと考えられています。これはまた別の機会にお話しします。

 

ヨーロッパでは1920年代から自社リスクの引受けを行う専門の会社組織は存在していましたが、当時はまだ法整備などはありませんでした。現在の様に保険会社として登録されたキャプティブが初めて登場したのは、1955年のアメリカ・オハイオ州です。保険ブローカーのフレデリック・レイスが、ヤングストン・アイアン・シート&チューブという鉄鋼会社の依頼で保険費用の削減に取り組みました。1955年当時、鉄鋼会社に保険を提供できる保険会社は数社しかなく、労働争議に直面していたヤングストンの保険料は上がる一方でした。レイスは、ヤングストンの保険のみを扱う新しい保険会社Steel Insurance Company of Americaをオハイオ州に設立し、リスクの一部を世界一の保険市場ロイズ・オブ・ロンドンから再保険を買うことで移転しました。これが自家保険会社としてのキャプティブの最初の事例です。フレデリック・レイスはこうしてキャプティブの父となりました。

 

キャプティブ保険会社が親会社にもたらすメリットは、すぐに明らかになりました。キャプティブ保険会社を持つ企業は、投資及び保険収益を得ることができ、再保険市場から直接保険を購入することができるようになります。

 

その後レイスは、1962年に規制の緩やかなバミューダに世界初のキャプティブマネジメント会社アメリカン・リスク・マネジメントを設立します。レイスは、キャプティブマネジメントの父でもあるわけです。これを機に多くのキャプティブ保険会社がバミューダやケイマン諸島など、オフショア地域に設立されるようになります。レイスは、バミューダでキャプティブに対して元受サービス、マネジメントサービス、ガバナンスサービス、再保険プールの提供、保険仲立(保険ブローカー)などのサービスを次々と提供していきました。1960年代末には、100社強のキャプティブが設立・運営されていました。

 

フレデリック・レイスはキャプティブ保険のイノベーションを讃えられ、国際保険協会による保険の殿堂入りをはたしています。

 

次回は、1970年代から1980年代前半までのキャプティブ発達の歴史を振り返ります。

キャプティブの本質は、「究極の責任感」

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。

 

先日、ジャコ・ウィリンクとレイフ・バビン共著「Extreme Ownership」という本を読みました。著者は、米海軍の特殊部隊SEALの少佐としてイラク戦争を戦った元兵士で、除隊後に軍隊経験を基にEchelon Frontというリーダーシップコンサルティング会社を経営している二人です。アメリカではベストセラーになっていますが、まだ日本訳は出版されていないようです。ウィリンク氏がTEDxで「Extreme Ownership」について話しているビデオがYouTubeにあるので、英語のわかる方は見てみてください。

 

 

Extreme Ownership」とは、優秀なリーダーが持つ「究極の責任感」のことです。自分のリーダシップ力を強化するヒントになればと読んでみましたが、これはキャプティブにも通じる話だと感じました。

 

日本の企業文化には、責任の所在が分かりにくい側面があると思います。何かを決定する際に全員の意見が一致するまで延々と議論したり、一つの決済にいくつも捺印が必要だったり。誰に決断の責任があるのかわかりにくいことも多いと思います。和を大切にする日本文化の表れでもありますが、同時に決断の遅れなどの弊害があるのも確かです。

 

ちなみに責任の所在という視点で保険という仕組みを見てみると、非常に面白いです。保険とは、問題が起きた時に他の誰かに責任を取ってもらうためにお金を払う仕組みといえます。言いかえれば契約で責任転嫁をする仕組みです。もちろん保険は契約ですので、保険契約の約款をきちんと読めば責任の所在はハッキリします。しかし私がキャプティブの仕事をしていてよく見かけるのは、会社経営者が自社が抱えるリスクの性質や保険契約の内容をよく把握していないことが多いということです。

 

「保険を買っているから大丈夫」

「保険会社の担当者に任せておけば安心」

「何かあれば保険会社が何とかしてくれる」

 

背景にはこういった安易な考え方があるのかもしれません。

 

Extreme Ownership」の考え方では、これは責任放棄にあたり、大きなミスを招く重大な問題です。軍隊組織であれば死や敗北を意味し、会社組織であれば業績悪化や倒産に繋がることもあります。自社のリスクは、経営者が責任をもって管理する。組織の存続と成長のために必要なのは、そんな「究極の責任感」かもしれません。

 

その点、キャプティブをフル活用している企業は自社のリスクをよく理解し、保険会社とも対等な立場で付き合うことができます。自社で保有すべきリスクはキャプティブで保有し、保有できないリスクは保険を買うかもしくはキャプティブを通して再保険を手配します。キャプティブは、「究極の責任感」を持って自社リスクと付き合うための仕組みです。

 

「究極の責任感」で自社のリスクと向き合い、リスクと上手に付き合っていくことが、会社経営者には求められていると思います。

 

 

 

 

 

2018年HCIC 東京セミナーが開催されました。

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。

 

11月5日に東京ステーションホテルでハワイ州キャプティブ保険協会(HCIC)主催のキャプティブ保険セミナーが開催されました。このセミナーは毎年行われており、ハワイ州保険局長や、各種ハワイ州サービスプロバーダーが、キャプティブ導入を控える日本企業にキャプティブ保険の紹介や最新情報の提供しています。弊社アラカイグローバルも、ハワイ州のキャプティブマネジメント会社とし協賛させていただきました。

このセミナーは、今後数年の間にキャプティブの設立を予定している企業が対象で、ハワイ州サービスプロバイダーの招待がなければ参加できません。参加希望者は毎年増えており、数年前からキャンセル待ちが出るほどの盛況ぶりです。日本企業のキャプティブ保険への関心が高まっていることがわかります。

 

先日このコラムで、HCICが米国本土のキャプティブオーナー向けに開催しているHCICフォーラムのご紹介をしました。

 

「日本企業向けHCICフォーラムをハワイ州で開催する」

 

これは私の夢の一つです。

日系ハワイキャプティブ数が100社を超える頃には実現しているでしょう。

 

日系キャプティブは年間約10社のペースで設立されています。

私の夢は意外と早く実現するかもしれません。

 

2019年もアラカイグローバルをよろしくお願いいたします。

 

 

 

2018 HCIC Forum が開催されました。

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。

 

今年もハワイ州キャプティブ保険協会(HCIC)主催のHCIC Forumが10月15日の週にハワイ島で開催されました。アラカイも、主要メンバー3名で参加してきました。

 

HCIC Forumは、毎年10月にハワイで開催されているハワイ州キャプティブ業界最大のイベントです。4日にわたり各種セミナーや、ゲストスピーカーによるキーノートスピーチ、ネットワーキングイベント、ボランティア活動などに、多くの業界関係者やキャプティブオーナーが参加します。

 

米国本土のキャプティブオーナーが年に一度ハワイを訪れる機会でもあり、分刻みで年次取締役会が行われる、キャプティブマネジャーと弁護士にとってはとても忙しい4日間でもあります。

 

ハワイ州や米国本土のサービスプロバイダーが一同に会するイベントでもあり、キャプティブオーナー企業や、キャプティブ導入を検討している企業にとっては非常に有益なイベントです。セミナー含めすべて英語で行われるイベントですが、今年は日本からも数名参加されていたようです。日本企業のキャプティブ保険に対する関心が高まっているということなのでしょう。

 

HCIC Forumは毎年ハワイ州の主要4島(オアフ、ハワイ、マウイ、カウアイ)持ち回りで開催されていて、2019年はカウアイ島での開催だそうです。ご興味があればぜひご参加ください。

 

「ハワイまで行くのはちょっと・・・」、「英語のセミナーを聞いてもわからないし・・・」と思われた方に朗報です。HCICは毎年11月に日本企業向けの東京セミナーを開催しています。もちろんアラカイも毎年参加しています。こちらは各ハワイサービスプロバイダーからの招待客のみ参加できるイベントで、今年はすでに満席だそうです。毎年開催されていますので、次回セミナーに参加希望の方は早めにご連絡ください。

 

 

キャプティブ保険 3つの使い道

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。

 

キャプティブ保険には色々な使い道があります。今回は忙しい経営者やアドバイザーの皆さんが押さえておくべき、代表的なキャプティブ保険の使い道を簡単にご紹介します。キャプティブ保険の使い道には、大きく分けてコスト削減、保険調達、収益獲得の3つがあります。

 

先ずコスト削減は、現在支払っている保険料の削減のことです。これは皆さんよくご存じだと思います。キャプティブ保険と言えばこれ、というくらい広く認知されています。毎年保険料を支払っているのに事故がほとんど起きていない場合、支払い保険料の一部を保険子会社に支払うことで保険料が削減されます。もちろん事故が起きたら保険子会社が損害を被るわけですから、リスクの質と量ををきちんと把握して管理することが必要になります。

 

次に、キャプティブ保険会社を特殊な保険の調達に使うという使い道があります。これはあまり知られていませんが、実は重要なキャプティブ保険会社の役割です。国内の保険会社が引受けを拒否したり必要な限度額を確保できない場合、キャプティブ保険会社が直接海外から保険を調達することができます。国内の保険会社を保険のデパート(小売店)に例えるなら、卸問屋にあたるのが再保険会社です。再保険会社は様々な保険商品を卸値で提供していますが、保険会社以外とは取引をしてくれません。キャプティブ保険会社は保険会社ですので、国内の親会社のために再保険会社から卸値で保険を仕入れることが可能になります。国内で入手困難な地震保険の調達などは、代表的な例です。

 

最後に、まだあまり認知されていませんがキャプティブ保険会社を使って収益を上げるという使い道があります。アラカイではこれを収益型キャプティブと呼んでいます。キャプティブ保険会社は保険会社ですので、本業のビジネスに関わる保険業へ進出することが可能になります。具体的な例を挙げれば、小売業にとっての延長保証や、不動産業にとっての家財保険などが対象になります。通常は保険会社に丸投げされている保険プログラムを、グループ内の保険子会社に担当させることで収益を社内に還流させることが可能になります。またプログラムのデータを蓄積することで本業へのフィードバックを行ったり、顧客サービスの付加価値を上げる効果も期待できます。

 

キャプティブと言えば保険料の節約だと思われている方が本当に多いです。特殊保険の調達や収益型キャプティブの活用は、もっと日本企業に活用していただきたいキャプティブ活用法です。一度ご相談ください。