キャプティブ保険の「キャプティブ」の意味とは?
そもそもキャプティブ保険の「キャプティブ」ってどういう意味なのでしょうか? わかりやすく解説します。
こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。
キャプティブ保険の仕事をしていると、「そもそもキャプティブってどういう意味?」という質問をよく受けます。
「キャプティブ保険」は、会計士やコンサルタントなどのビジネスの専門家の間ですら、まだあまり知られていない言葉です。
新しいコンセプトを伝えるのに、いきなり「キャプティブ」というどこの言葉かもわからない横文字が出てくると、それだけで尻込みしてしまいます。
しかし「キャプティブ保険」は今、確実に企業経営の常識になりつつあります。
今回は、「キャプティブ保険」の「キャプティブ」という言葉の意味について解説します。
こんな内容のお話をしていきます。
- 「キャプティブ保険」という言葉の起源
- 「キャプティブ」の本来の意味
- 「キャプティブ保険」=「自家保険」?
- 「キャプティブ保険」は企業経営の標準語になる
「キャプティブ」という言葉の起源
「キャプティブ保険」は日本企業にとってはまだまだ馴染みのない言葉ですが、欧米の経営者層ではリスクマネジメントの有効な手段として広く認知されています。
実は、その歴史は意外と古いのです。
世界初のキャプティブ保険会社は、1955年に米国オハイオ州に設立されたSteel Insurance Company of Americaという会社です。
当時、フレデリック・レイスという保険ブローカーが、Youngston Sheet and Tubeという鉄鋼会社から保険料削減のコンサルティングの依頼を受け、自社のリスクのみを扱う保険子会社の設立を提案したのがキャプティブ保険のはじまりです。
Youngston社は、鉄鋼業の原料として欠かせないコークスと鉄を、市場の変動に影響を受けずに安定的に調達するために自社で鉱山を所有しており、これらの自社鉱山を「captive mines(キャプティブ鉱山)」と呼んでいました。
レイス氏は、保険市場の変動に影響を受けずに安定的に保険を調達することができる保険子会社を、依頼主であるYoungston社の命名慣習にしたがって「captive insurance company(キャプティブ保険会社)」と名付けたのです。
「キャプティブ」の本来の意味
「キャプティブ」という言葉は、英語の「captive」という言葉です。
辞書をひいて出てくる定義は、「とらわれた」とか「とじこめられた」などの意味ですが、どちらもピンときませんよね。
私流に意訳すれば、「キャプティブ」という言葉は「自分で管理できる」という意味だと思います。
つまり「キャプティブ保険」というのは、「自分で管理できる保険」と理解すればよいと思います。
「キャプティブ保険」=「自家保険」?
「captive insurance(キャプティブ保険)」という言葉の日本語訳は、一般的に「自家保険」だと思われていますが、私は違うと思います。
「自家保険」は、英語の「self-insurance」を日本語に訳した言葉だと思います。
英語の「self-insurance」と「captive insurance」を比較した場合、同じ意味とは言えないと思います。
「self-insurance」とは、自分が抱えているリスクに対して保険を買っていない状態です。
保険子会社を設立して、自社リスクを保険化するキャプティブ保険とは、だいぶニュアンスが違いますね。
米国では会社が自社の責任で労災のリスクを負うことが認められており、労災保険を買わずに自社で引当金の積立てをしているケースがよくあります。
米国では、この状態を一般的に「self-insurance」と呼んでいて、「captive insurance」は「self-insurance」の次の段階であると捉えられています。
一方、日本国内では労災保険の購入が義務化されているので、自家保険という言葉自体にそもそも馴染みがありません。
「キャプティブ保険」という馴染みのない言葉を、「自家保険」という同じく馴染みのない言葉で置き換えたところで、あまり意味はないと思います。
キャプティブ保険の本場、欧米ですでに定着している「captive insurance(キャプティブ保険)」という言葉を、日本でも定着させる方が正しいと思います。
「キャプティブ保険」は企業経営の標準語になる
日本語の素晴らしいところは、海外から入ってきた新しいコンセプトをそのまま日本語として定着させてしまうところだと思います。
「コンプライアンス」や「ガバナンス」など、すっかり日本語として定着した外来ビジネス用語はたくさんありますよね。
「キャプティブ保険」という言葉の意味も、あと10年もすれば当たり前のビジネス用語として定着しているだろうと思います。
「キャプティブ保険」という言葉を聞いて、「保険子会社にリスクを管理させるあれね。」という反応が当然のように返ってくる時代が、もうすぐそこまで来ているのです。